日本では、世界に誇るべき21の文化遺産、5つの自然遺産、合計26の世界遺産が登録(2024年8月現在)されています。ユーラシアの旅では、世界遺産を訪問するだけではなく、世界遺産となった文化、歴史背景をより深く掘り下げる旅を企画しています。日本の世界遺産を訪れるツアーは、ページ上下にある「関連する旅行」をご覧ください。
日本の世界遺産
世界遺産の始まりは、エジプトでの遺跡救出大作戦。アスワンハイダムの建設によって、ナイル川に沈む運命にあったアブシンベル神殿などヌビアの遺跡群を移築して保存する救済キャンペーンを実行したのです。この時、「人類共通の遺産」という世界遺産条約の基本的な考え方が広がり、1972年の第17回ユネスコ総会で「世界遺産条約」が採択されました。
日本では、世界に誇るべき21の文化遺産、5つの自然遺産、合計26の世界遺産が登録(2024年8月現在)されています。日本国内の世界遺産では、どこに訪れたことがありますか? ユーラシアの旅では、世界遺産を訪問するだけではなく、現地のガイドさんから説明をうけたり、博物館や資料館も訪れ、世界遺産となった文化、歴史背景をより深く掘り下げる旅を企画しています。
北海道・東北
知床(北海道):2005年登録・自然遺産
シマフクロウやシレトコスミレといった絶滅危惧種をはじめ、知床には希少な動植物が分布しています。また、ヒグマやエゾシカ、トドやアザラシなどの大型哺乳類も高密度で生息しています。海から陸へとつながる生態系がわかりやすく見られること、希少な動植物の生息地となっていること、そしてこれらを保全していくための管理体制が整っていることが評価され、世界自然遺産に登録されました。
北海道・北東北の縄文遺跡群(北海道・青森県・岩手県・秋田県):2021年登録・文化遺産
今から約15,000年前から約2,400年前までの1万年以上もの間、日本列島に続いた「縄文時代」。温暖な時代の海進、寒冷に伴う海退といった劇的な環境の変化にも対応し、人々は狩猟や採集、漁労を中心とした暮らしを営んでいました。また自然崇拝などの精神文化も育まれてきたことが出土品からも感じられます。世界遺産には、北海道・北東北に点在する、集落や墓地、祭祀・儀礼の場である環状列石など、人々の生活の実態を示す17の遺跡が登録されました。
白神山地(青森県、秋田県):1993年登録・自然遺産
白神山地は青森県と秋田県に跨っており、白神山脈全体の1/3、青森県側が74%、秋田県側が26%の割合で世界遺産に登録されています。約10000年前からの原生ブナ林が殆ど人間の影響を受けず、今も手付かずのまま残っており、世界最大級のブナ原生林です。
日本海沿いの豪雪地域でありながら、白神山地は日本固有のブナのみで形成される森林なのです。その他クマゲラのような希少な鳥類や、ニホンカモシカ、ツキノワグマのような大型哺乳類など多種多様な動植物が生息・自生するなど貴重な生態系が保たれています。
平泉-仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群(岩手県):2011年登録・文化遺産
平泉は、11世紀から12世紀に京都と肩を並べる日本の北方領域の政治・行政上の拠点でした。古来からの自然崇拝や神道と融合し日本独自の発展を遂げた浄土思想は、心の在り方だけでなく、寺院や庭園によってこの世に浄土(仏国土)を表現する理念も示していました。藤原氏の栄華を伝える「中尊寺」「毛越寺」、今や遺跡となってしまった「観自在王院跡」「無量光院跡」と聖なる山として造園や寺院建設の起点にもなった「金鶏山」の5つが世界遺産に指定されました。
北陸
白川郷・五箇山の合掌造り集落(岐阜県、富山県):1995年登録・文化遺産
日本有数の豪雪地帯ならではの、急こう配な傾斜を持った屋根がある住宅が残る五箇山(富山)や白川郷(岐阜)。冬の間にどんどん降り続く雪を、極力雪降ろしする手間を減らすように工夫されたことが起源とされています。現在ではこの昔ながらの合掌造りの家も少なくなってきましたが、相倉集落では23戸、菅沼集落では9戸が現存し、かつ今なお住宅として使用されています。
関東
日光の社寺(栃木県):1999年登録・文化遺産
日光は8世紀から男体山を中心とする山岳信仰の聖地で、僧侶達により、神聖な山々の斜面や山麓、中禅寺湖畔に社寺が造営されました。17世紀には徳川初代将軍家康の霊廟として東照宮が造られ、徳川幕府の聖地となりました。幕府が総力をあげて造営した建物は、人物・動物・植物などの彫刻が多く、漆塗や彩色、飾り金具などで華やかに飾られており、徳川家の莫大な富を反映しています。世界遺産に登録された日光の社寺は、東照宮及び二荒山神社と輪王寺内の103の宗教建造物から構成されています。
小笠原諸島(東京都):2011年登録・自然遺産
東京本土から南へ1,000キロ、東京を出発して船で約25時間の距離に位置する小笠原諸島。
この小笠原諸島は、かつてどことも地続きになったことがなく、どの大陸からも遠く離れた“海洋島”のひとつです。その為、小笠原諸島に生息する動植物は小笠原の環境に適応し、独自の進化を遂げ、ユニークな生態系を創り上げました。別名「東洋のガラパゴス」と呼ばれ、大自然溢れる小笠原諸島は、2011年に世界遺産登録されています。
富岡製糸場と絹産業遺産群(群馬県):2014年登録・文化遺産
明治5年(1872)に明治政府が設立した官営の製糸場で、木骨レンガ造の繭倉庫や繰糸場がほぼ完全に残っています。当時は最先端の工場として養蚕・製糸業を世界一の水準に引き上げ、日本が先進国の仲間入り果たすきっかけともなりました。関連施設として、富岡製糸場の他に、二つの養蚕学校と蚕卵保管庫も世界遺産に登録されています。
国立西洋美術館本館(東京都) – ル・コルビュジエの建築作品の一部として:2016年登録・文化遺産
パリを拠点に活躍し、近代建築三大巨匠のひとりと言われているフランス人建築家ル・コルビュジエ。彼の作品の中から選ばれた3大陸7か国(日本・フランス・ドイツ・スイス・ベルギー・アルゼンチン・インド)にある建築群で構成された世界遺産。「住宅は住むための機械である」という思想のもと、建築作品の多くが鉄筋コンクリートで造られているのが特徴です。ル・コルビュジエの作品は、合理的かつ機能的なデザインで、建築だけでなく都市計画においても大きな影響を与えたといわれています。
中部・甲信越
富士山-信仰の対象と芸術の源泉(静岡県、山梨県):2013年登録・文化遺産
富士山はその美しさと共に古来からの噴火により、神の山として畏れられ、崇められてきました。かつては遠くから仰ぎ見て崇拝する信仰の対象でしたが、日本古来の山岳信仰の「修験道」の道場となり、江戸時代には「富士講」として登って参拝する山へと変化していきました。富士講は関東を中心に大流行し、多くの人々が霊地富士山へ登山巡礼をするようになりました。富士山の登山道も生きている信仰として、山麓の神社や湖などとともに、世界遺産として登録されています。
佐渡島の金山(新潟県):2024年登録・文化遺産
佐渡金山の鉱脈からは、金・銀が江戸時代から平成の操業停止までの間、採掘され続けてきました。佐渡金山は日本だけではなく世界最大級の金脈を持つ鉱山でした。また、18~19世紀の産業革命期に鎖国をした日本には、採掘の機械化が導入されず、19世紀半ばまで手掘りでの採掘、手作業での小判製造など、時代を経るごとに技術を向上させてきたという世界的にみて珍しい歴史を有することなどから世界遺産に登録されました。
関西
姫路城(兵庫県):1993年登録・文化遺産
鎌倉時代末期に築かれたお城を、羽柴(豊臣)秀吉が三層の天守閣を持つ城郭に改修しました。その後、池田輝政が約8年の歳月をかけて、五層7階の大天守を持つ現在の城を築きました。日本で唯一の連立式天守になっており、白壁が美しく華やかな構成美が羽を広げて舞う白鷺にたとえられ白鷺城(はくろじょう、しらさぎじょう)とも言われています。約5年に亘って行われた“平成の大修理”を経て、かつての姿を取り戻しました。
法隆寺地域の仏教建造物(奈良県):1993年登録・文化遺産
法隆寺と法起寺の48棟の木造建築物が世界遺産です。別名は斑鳩寺(いかるがでら)と呼ばれ、聖徳太子が父・用明天皇のために創建したと伝えられており、仏教が日本に伝わった後の7世紀に建立されました。世界でも最古の木造建築物の一つとされています。柱に見られるエンタシスという様式は遠くシルクロードを伝わり、古代のギリシャ建築の流れを汲んでいます。またその後の日本における仏教建築にも深い影響を与えました。創建時の法隆寺の建物は焼失しましたが、火事の直後に再建が始まり、8世紀初期に完成しています。
古都京都の文化財(京都市、宇治市、大津市):1994年登録・文化遺産
世界遺産『古都京都の文化財』は京都府京都市、宇治市及び滋賀県大津市内の198の建物と12の庭園が指定されており、その殆どが10世紀から17世紀の間に造られました。794年に唐の首都「長安城」をモデルに京都に平安京が建設されたのが京都の歴史の始まりです。政治機能が鎌倉や江戸に移った後も文化の担い手として1000年以上もの間、日本の木造建築の発展に大きな影響を与えてきました。古都京都の街並みとともに、各地で催される伝統行事も見学します。
古都奈良の文化財(奈良県):1998年登録・文化遺産
古都奈良市は710年から約70年間、都がおかれ、政治・経済・文化の中心として栄えました。中国(唐)との交流を通して日本文化の原型が形成されました。その後に都が京都へ移った後も、寺社を中心に宗教都市として繁栄しました。薬師寺・唐招提寺や世界最大の木造建物である東大寺など、古くは8世紀からの建造物で成り立っています。
紀伊山地の霊場と参詣道(三重県、奈良県、和歌山県):2004年登録・文化遺産
太平洋を臨む本州最南端の半島にある紀伊山脈の森の奥深くに広がる、吉野・大峰,熊野三山,高野山の3つの霊場は307キロに及ぶ参詣道 (通称:熊野古道)により奈良や京都へと繋がっています。この霊場や参詣道、紀伊山脈の森が日本古代からの自然崇拝と仏教の山岳信仰や神仏習合思想、さらには極楽浄土があると信じられるようになり、世界遺産に指定された独特の文化的景観を造り出しました。
百舌鳥・古市古墳群(大阪府):2019年登録・文化遺産
大阪湾の平野に造られた百舌鳥・古市古墳群は、4世紀後半から5世紀後半にかけて造営されました。大阪の地が選ばれたのは、当時政治・文化の中心地であったことと、また大陸に向かう航路の発着点であったことが考えられます。ビルや住宅がひしめく大阪・堺市の市街地に残る百舌鳥古墳群には、世界最大級の仁徳天皇陵を中心に大小44基の古墳が密集しています。全長は500メートルにも達し、上空からは「鍵穴」のように見え独特な形をしています。日本全国にある約16万基の古墳の中では最大です。「秦の始皇帝陵」が350メートル、エジプトの「クフ王のピラミッド」が230メートルなので世界的にみても最大級の墳墓です。古墳の上部は埴輪などで飾り立てられ,葬送の儀礼が行われました。
中国・四国
原爆ドーム(広島県):1996年登録・文化遺産
1945年8月6日に世界で初めて投下された原子爆弾の爆心地付近に残った唯一の建物です。原爆ドームは人類が作り出した最も破壊的な力である原子力爆弾の象徴であるだけでなく、世界平和と核兵器の根絶への希望を表現するものです。建物は原爆の爆心地から約160メートルの至近距離にあり、熱線と爆風により全焼しましたがドーム中心部は奇跡的に倒壊を免れました。「原爆ドーム」という呼び名は、建物の屋根が傘状に残っている姿から呼ばれ始めました。
厳島神社(広島県):1996年登録・文化遺産
厳島神社の創建は593年(推古元年)です。12世紀に平清盛によって現存の規模に造営されたと伝えられています。伝統的な日本の神道の建築スタイルに習い、信仰の対象である背後の山や自然を拝むできるように山麓に作られました。海と背後の山々との調和した風景は日本の美の定番です。背後には神体山があり、手つかずの原生林が残りました。建物が海にせり出すように築かれたのは、神聖な島に建造物を建てるのを避けた為であった為と言われています。昔から宮島全体が神社地として保護され、農耕が禁じられてきたことから、当時のままの姿で保存されています。
石見銀山遺跡とその文化的景観(島根県):2007年登録・文化遺産
銀の精錬には大量に木材が必要でしたが、石見銀山周辺は今も広葉樹など豊かな森林が残っています。世界遺産に指定された理由の一つに、自然環境を破壊しない「自然環境と共存した産業遺跡」であることが評価されました。「間歩」と呼ばれる奥深い坑道内部にはノミの跡が残り、当時の作業の様子を知ることができます。周辺には銀山で亡くなった人々を供養する為に建てられ、501体の羅漢像が安置される羅漢寺や銀山で栄えた豪商の邸宅など当時の面影を残す町並みが残っています。
九州・沖縄
屋久島(鹿児島県):1993年登録・自然遺産
九州本土の南60kmに位置する屋久島。その年間降水量は、本州の約2~3倍とも言われ、島内の山岳部では年間10,000mmもの雨が大地に降り注ぎ、世界的にみても稀有な屋久島の生態系を育みました。
そんな屋久島を代表するのが縄文杉です。屋久島の標高500m以上に自生する杉の中で、樹齢が500年を越える杉を屋久杉、満たないものを小杉と、地元の人々は呼んでいます。その屋久杉を代表する古木が1966年に発見されました。幹の形が縄文土器に似ており、当時の推定樹齢が4,000年以上で縄文時代から生き続けていることから、と諸説あるものの、その古木は縄文杉と名付けられました。
宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県):2017年登録・文化遺産
九州沖の玄海灘に浮かぶ神が宿る島・沖ノ島。4世末から9世紀の末にかけて朝鮮半島や大陸との交流・交易が活発になり、船舶の航海安全を祈願する祭祀が盛んに行われ、航海の安全を司る「宗像三女神」を祀る宗像大社が造営された。神話では、この地に降臨した「宗像三女神」を祀った沖津宮(おきつぐう)、中津宮(なかつぐう)、辺津宮(へつぐう)の三宮を総称して宗像大社と呼ぶ。全国各地に散らばる7千以上もの宗像神社、厳島神社の総本社だ。21世紀の現代に至るまで続いている世界でも例のない遺産群として2017年に世界遺産に登録されました。
長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産(長崎県・熊本県):2018年登録・文化遺産
16世紀に日本に伝わったキリスト教。秀吉の治世以降の禁教と迫害の時代を潜伏キリシタンとして信仰を貫いた信者の方たち。潜伏キリシタンが蜂起した島原、潜伏期の集落、そして開国後に日本を訪れた西洋人と再会し、新時代を迎え喜びとともに建設された教会などが指定されています。
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(鹿児島県・沖縄県):2021年登録・自然遺産
2021年登録の自然遺産。中琉球の奄美大島、徳之島、沖縄島北部と、南琉球の西表島の4つの地域にまたがる面積42,698haの陸地域は、日本列島の南端部に位置する琉球列島の一部の島々で常緑広葉樹多雨林に覆われています。海を隔てたそれぞれの島の生き物は海を越えて生息域を広げたもの、狭いエリアで独自の進化を遂げたものなど多岐に渡っています。
複数県
明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業:2015年登録・文化遺産
日本は幕末から明治にかけ、西洋諸国の最新技術を吸収し、自らの力で人を育て、製鉄・製鋼,造船,石炭などの産業を興し、わずか50年あまりで産業化を成し遂げ、工業国となりました。このめざましい発展の歴史を物語る「明治日本の産業革命遺産」は、長崎県長崎市の炭鉱「軍艦島」をはじめ、山口県萩市のたたら製鉄遺跡や旧グラバー住宅、官営八幡製鉄所など全国8県11市に渡る構成資産から成り立っています。(福岡県の北九州市、大牟田市、中間市、 佐賀県の佐賀市、長崎県の長崎市、熊本県の荒尾市、宇城市、 鹿児島県の鹿児島市、 山口県の萩市、 岩手県の釜石市、静岡県の伊豆の国市)
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